伝説のVMDメルマガ『卸しと小売のGAPに立ち向かう男』
今日も小売の最前線でお仕事をされている方を迎えて、
お客様に商品を購入していただくことの楽しさや、
難しさについて熱く語っていこうと思っておりますので、
閉店まで是非お付き合いくださいね。
GUEST No.15 『卸しと小売のGAPに立ち向かう男』
バタンッ(ドアの開く音)
「いらっしゃいませ」(私、以下Fで)
「こんばんは、深澤さん。」(以下S)
「どうも、いらっしゃいませSさん」
ゲストの紹介
Sさんは某紳士ブランドの営業部署のTOPでした。しかし、社全体が卸し
主体の事業から小売主体の事業へと転換していく中で、チーフエリアマネー
ジャーへと肩書きを変え、ご活躍です。
F:いやー、いらっしゃいませ。いつも本当にお世話になっております。
S:こちらこそ、こちらこそ。
F:何をお飲みになりますか?
S:ハイボールね。
F:最近、流行ってますよね?ハイボール。小雪とかCMやってますもんね。
S:俺は昔からこれだから!!
F:失礼しました。
Sさん、早速なんですが、現在のお仕事内容といいますか、現状の業務
をお伺いしたいのですが。
S:知ってるでしょ!! まぁ~いいや、今はね紳士ブランド、直営43店舗
の責任者ですよ。ディストリビューターもやるし、もちろんエリアマネ
ージャーの教育も行うし、新店舗の開発、出退転の管理もするね。何で
もするよ。
F:そうですよね。ご苦労様です。
まぁ~僕もVMDというか・・・関わらせて頂いてますが、完全にショ
ップMDまでやらされてますよね。
S:そのつもりだよ。今度名刺出すから。だってVMDって言ったら、商品
ありきな仕事でしょ?そんで販売計画まで作ってるんならショップMD
から考えなきゃぁでしょ?ただ、もちろん現場で施工もしてもらってる
けどね。でも当たり前でしょ?企画もいて、ショップMDもいて、VMD
もいる会社なんて人が居すぎでしょ?業務範囲として、仕事量が増える
のは分かるけど、おれは専門職が多すぎて、大切なことが一々薄まるの
が嫌なんだよね。
うちの会社だって、深澤君が企画と話せて、販売計画も作りながら店頭
展開まで考えてくれるから仕事をしてもらってる訳で、VMD専門なん
て言ったら、正直、必要ないよね。
F:ウッ・・コメントしづらいですね。完全に僕自身の職種?専門分野の否
定とでも言いましょうか・・・・・・・・・でも事実でもあります。
S:そうでしょ?店長だって、売るだけの人は要らないし、スタッフマネジ
メントも出来るほうがいい。やっぱりデザイナーだって、絵が描ける人
よりも、全体の企画が出来る企画MDが出来る人がいいでしょ!!
F:一概にそうは言えないかもしれませんが、規模によっては確かにそうで
すね。
S:それはうちが小さいってこと?
F:違います。
S:まぁ僕もね、こんな言い方をしたら悪いけど、正直、卸しだった頃に、
コンシューマーまでの意識なんて無いわけ。出荷した時点で成績になる
し、出荷枚数が多い人が評価されるわけだから、本当にイケイケドンド
ンだよね。だから、小売に行ったときに、深澤君と会って『今までやっ
てこられたお仕事は卸しの営業で、小売事業では何の利益にも結びつい
てませんから、業務としては出荷担当者ですね』と。
あれ言われたときには、殺す!!って思ったね。今だから言うけど。
F:・・・・・・・・・・殺すですかぁ・・・
S:結構ね、ニコニコしながら酷いこと言うよ、君は!!
F:気をつけます。
S:まぁ大丈夫だよ、今は殴ってやるとしか思ってないから。
F:・・・・・・そっちのほうが現実味があって怖いですね。
S:あのときの発言は、小売の本社スタッフは店頭で起こること全てに責任
を持ち、把握していないといけないということだろ?
だったら君も全部関わってよ。俺は人と店のマネジメントもやってるん
だから。
F:はぁ~・・・・・・
F:あの~VMDのメルマガなので、出来ればVMDについて絞って伺って
もいいですか??
S:だからね、VMDって言うのはプラモデルの完成時の模範を製作する人
のこと?それとも設計図を描いて、必要なパーツを集める人のこと?
それとも、その両方なの?
F:プラモデルですか?
多分、作り手のレベルに合わせた設計図を描いて、部品を集めて、完成
時の模範イメージを作る人ですね。
S:じゃ~やっぱり全部だよな!!
F:あっ!!もしかしたら設計図はMDかもです。
S:駄目ジャン。人事、総務、そして企画と、生産以外の本社メンバーは、
作り手のレベルを知って設計図を描いて、そして模範イメージを作る。
これをパッケージにしてプラモデルは製品になるよな。
F:その説明はプラモデルじゃないと駄目ですか?
S:好きだからいいんだよ。
S:だからこれしかないんだよ、さっき言ったことしかね。それをMDがやろ
うが、企画MDが行おうが、販促がやろうが、VMDがやろうが、それは
誰でもいいの、俺はね。でも肝心なのは、作り手のレベルを分かってる人
が全体責任だったり、全体のディレクションをしているかってこと。設計
図も模範イメージも作り手にとって、会社が自分たちをどのくらいに考え
ているのかを把握出来るものだから、深澤君に全部関わってもらって作成
してもらってるわけ。
F:そうですね。肩書きや業務への入り口が違うだけで、後は一緒ですもんね。
アウトプットの仕方が、担当ごとに徐々に店舗向きに変化していくだけか
もですね。
S:そうだよ
小売と卸しの違いは、コンシューマーにどれだけ近い組織を作るかがポイ
ントだってことが、この2年間で一番感じたことだからね。だから、全員
で店を中心に全ての業務が走るんだよ。VMD専門でしょ?
だったら、企画から入り込んでいかないとね。これからも頼むよ。
F:ちょっと業務多いですよね。
S:じゃー帰るからね。
F:えっ、むちゃ振りですよね?
S:飲みなおすよ。
S:じゃあ来週、本社でね。
ということで、プラモデルの話は、よく分からなかったんですが、組織の中
の誰もがお客様に近づくべきで、肩書きによって業務の範囲を作るのは、本
来の姿ではないのではないか?と、常に考えていらっしゃるSさんでした。
私もお付き合いさせていただいて2年になるのですが、2年前とは考えられ
ないほど、よくお店に足を運び、そしてお客様と話し、スタッフと話す。も
しかしたら今は、Sさんが最もお客様のことをよく知っているスタッフかも
しれないと思わせるくらいです。
小売と卸し、違いはありながらも、それぞれが、顧客にさらに近づこうとし
ているのが現状です。Sさんのようなリーダーが出てくることによって、よ
り一層私への要望や仕事内容が厳しくなるのですが、実はそれがあることが
仕事本来の充実に結び付くのかもしれませんね。
深澤 智浩
株式会社深澤企画 代表取締役
パリをはじめとする海外の店舗や、国内のSM/GMSでのあらゆる店舗・売場の店舗デザイン・店頭戦略を学び、独立。現在は、小売業からの依頼に加え、メーカーからの販促提案・ショールーム展開の相談など様々な業種・業態の店頭戦略(SP・VMD・設計・店頭ブランディング)を、年間100件以上行っている。近年では、ショッピングモールやチェーンストアからの依頼も多くなっている。また、「商業界」の教育講座、デザイン専門学校、企業研修でも指導にあたり、人材育成にも注力している。