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伝説のVMDメルマガ 上海在中の店舗デザイナー Oさん

みなさん大変ご大変無沙汰しております深澤です。
今夜もPAL’S Barを開店させていただきます。

今日も小売の最前線でお仕事をされている方を迎えて、お客様に商品を購
入していただくことの楽しさや、難しさについて熱く語っていこうと思っ
ておりますので、閉店まで是非お付き合いくださいね。

GUEST No.25
     『上海在中の店舗デザイナー Oさん』

バタンッ(ドアの開く音)
「いらっしゃいませ」(私、以下Fで)
「どうもこんばんは。」(以下O)
「いらっしゃいませ」

★ ゲストの紹介
Oさんは現在上海に店舗デザインの事務所を構えローカルの企業や、日本
から出店されるブランドなどの店舗デザインの多くを手掛けるデザイナー
です。今回、中国のローカル企業の仕事を通じて知り合うコトができ、今
現在、上海での仕事のパートナーとして、そして飲み仲間として非常にお
世話になっている人物です。

F:こんばんは、Oさん2週間ぶりですが今回は来店頂きありがとうござ
  います。
O:いえいえ、これってサボってばかりいるお店でしょ?大丈夫?
F:サボっているわけでは訳ではありませんが、そこは突っ込まないでく
  ださい。それよりも今回は営業目標50回までの記念すべき折り返し
  地点、25回目のお客様がOさんですから、本当によろしくお願い致し
  ます。
O:ハイよろしくお願い致します。

F:早速ですが、何を御飲みになりますか?パイチュウ(中国で飲まされ
  る、僕的に非常にストレスになるお酒)ですか?
O:かんべんしてよ~!!じゃーウォッカトニックでッ!!

F:かしこまりました。お付き合いします。さて、まずはOさんの事務所
  の話からお伺いしようかと思いますが、なんで上海に事務所を構えた
  んですか?失礼ですが、あんまり中国語は得意というわけでもありま
  せんよね(笑)
O:(爆笑)そうだよね。これも偶然なんだけど、前社(大手の設計事務
  所)に居た時に上海に赴任したんだけど、赴任して1年くらいで撤退
  することになっちゃったなんだよね。

  僕自身、その時結構ローカルのお客様と親しくなりだしていたし、凄
  く上海っていう街に刺激を受けてね…それで撤退を期に会社を退社し
  て、現地スタッフの何人かと一緒に今の事務所を思い切って構えたわ
  けです。
F:そうなんですね。なんか外から見ていると最初から結構順調な感じが
  しますが…実際どうなんでうか?
O:正直、日本と比べると中国には仕事が沢山あるんだよね。SCの開発
  や店舗の出退店など、深澤君も知ってると思うけど凄く多い。
  タイミングが良かったのと、今の事務所を一緒に興したスタッフの営
  業力が凄く高かったことが本当に良い方向に向いたんだ。でも韓国や
  香港、そして現地の安くて、凄く最初のプレゼンが上手い競合もイッ
  パイいるけれど、今はなんとかがんばってますよ。

F:そうですか。じゃーもう一つ、上海での日本のブランド事情について
  お伺いしてもいいですか?
O:それって深澤君のほうが詳しいでしょ?
F:イエイエ。僕、上海についてもリサーチする前にお客様先に入って、
  帰国までもう缶詰状態ですからね。勿論、僕のお客様が入っている百
  貨店や商業エリアのことは何となく掴んでいますが、その程度です。
O:そっか、そうだよね。夜、仕事が終わってから飲みに行こうと誘って
  も、かなり遅い時間に仕事が終わるもんね。

F:多分仕事の仕方が悪いのかもしれません…。それはいいとして、どう
  ですか?クールジャパンのブランドは?
O:正直、ユニクロと無印良品以外は似たりよったりかな~…。これは店
  舗デザインの視点での話だからね。僕らの事務所も最近はローカルブ
  ランドの仕事が多いから話せるけれど、特徴が無さ過ぎだよね。什器
  単位のSKU数とか、理論的な所は凄く最初は計算されているように
  見えるけど最初だけだし、中国、香港、韓国ブランドと比べると「あ
  りそうな店舗」を作る傾向が凄く強い。
F:それって商品も同じことが言えますね。
O:そうでしょ!!

F:上海のホットスポットに最近、日本のブランドが数店舗出店していま
  すが、特に中国で見ると、「どこかで見たような商品の焼き回しが、
  それほど安くないプライスで売っているお店」これが正直な現地方々
  の感想です。

  上海ってドンズバなパクリ商品がイッパイSCや百貨店の周辺で売っ
  ているじゃないですか?そっちのほうが値段だけ見ると断然安いから
  言える発言ですけどね。
  ただ、単純にオリジナルの商品に微妙に良く似た安くない商品を買う
  のと、オリジナルそっくりに作られた安いパクリ商品、さぁ~現地の
  若者がどっちを買うか?というと…そこは正直には言えませんがね…

  あと韓国系とローカルブランドの店舗で、店舗のデザインやプロモー
  ション系もオリジナル程とは言えませんが、かなり潔く良いとこ取り
  して再現しているブランドがヤングマーケットで出てきていますよね。
  このあたりは結構熱い戦いを繰り広げてますよね。
O:そうッ!!今ね、この辺りのブランドの戦いが熱いね。メンズのヤング
  ブランドの戦いは今結構熾烈だよね。日本は完全に乗り遅れた感じだ
  ね。
  店舗デザインも凄くこだわっているし、深澤君の目で見ても頑張って
  る感あるでしょ?
F:そうなんですよね。毎回、訪中する度にビックリしますもん。
  そして、上海なんかだと、その影響からまだまだ乱暴な感じしますが
  少しづつお洒落な子が増えてきていますからね。

O:そうだね。増えてるね。
  あと最近思うんだけど、以前日本にいたときに中国人のファッション
  やデザイン関係の人間が、もうパシャパシャ写真撮るのが、嫌で嫌で
  しょうが無かったんだけど、今思うとある意味貪欲な向上心の現れだ
  し、それはそれで凄く大切なことのようにも思えてきたんだよね。多
  分、中国に居て麻痺しだしてきたかもしれないけど…。

  逆に今心配なのは、いつまで日本に視察に行こうと思う中国人が居る
  かと考えると、もう凄く近い将来、刺激的なモノやコトは中国国内の
  方があるんじゃないかと考える人が多くなって、日本のファションや
  デザイン関連の現場写真を、パシャパシャ撮る人たちはいなくなるん
  じゃないかと最近思うよ。
F:確かに以前よりは減ってきたかもしれませんね。
  店内でのパシャパシャ。
  そうですか…そんなこと考えられてたんですね。なんか寂しい話に
  なっちゃいましたね…

O:うん。でもコレって店舗や服の話もコレまでの話も、日本に対する否
  定的な話では全く無いと思うの。
F:あっ今良いこと言おうとしてますね。
O:そういう訳でも無いんだけど、決して日本のレベルが下がっていると
  かそういうことじゃなくて、アジア全体レベルのファッションに関す
  るスピード感が上がってきているだけなの。まだまだ日本はアジアで
  は、topレベルにいると思うけど、今まで効率に走りすぎてきたか
  ら方向転換を迫られているだけなのと、他の国と同様にもっと貪欲に
  学ぶべき姿勢を取り戻せよって警告が出ていることを実感しているだ
  けかな~

F:なるほど。
O:日本人て、なんでも技術的にはNo.1になれると思っているけど、
  それって技術力が凄いんじゃなくて、それだけ、コレまで日本を引っ
  張ってきた人たちの情熱が強かった証なんだよね。
F:そうかも知れませんね。今の日本の音楽やファッションて混ぜたり、
  組み合わせたりすることで出来上がってるじゃないですか、それって
  これまで誰かが作ってきたことを上手に利用して出来上がってる部分
  が大きいわけですから、今からは、今一度情熱を持っていろんなモノ
  ・コトをゼロから作り上げていくことが、また必要になっていくとい
  うことですよね。

O:そうだと思う。どれがオリジナルでどれが本物って言うのは生み出し
  た自分が決めることだとおもうから、だからこそ自分自身が胸を張っ
  てオリジナルだといえるハードやソフト生み出す情熱が凄く大切だと
  思うんだ。
  対外的にはクールジャパンかもしれないけど、本当は、もっともっと
  熱くなることを取り戻すべきだよね。世界的に活躍してる人は皆熱い
  もん!!

F:そうですね。
  僕ももっともっと熱くがんばりたいです。
  今日は良いお話本当にありがとうございました。
O:とんでもない。また上海でお待ちしてますよ。
F:ありがとうございます。
  これからもよろしくお願い致します。

日本から発信されるクールなジャパンとは裏腹に、海外で熱く活躍される
Oさんでしたが、やはりクリエイティブを生み出す人達は皆熱い!!
そして、そんな人達と一緒に仕事が出来ることは本当に幸せなことです。

熱い人たちと話をすると、いつもこんな話題になるのですが……。
ファッションにしても、それ以外のモノにしても、今、日本が生み出して
いるコンテンツは正しい。ただ正しいことがこれからの楽しいことだった
りいろんな国の人達にとって魅力的なことなのかと考えると、そこには、
正しさだけじゃない何かが必要なのでは?

じゃーその何か?を見つけようと思うと、そこには人並みはずれた情熱を
もっていないと心が折れてしまう。それほどまでに今は、正しいとは言え
ないこと、求めていくコトが難しい社会になっているのも日本なんじゃな
いかと、Oさんとの話の中でまたそんな話を思い出しました。

いつも不定期になってしまって本当に申し訳ありません。

深澤智浩

深澤 智浩

株式会社深澤企画 代表取締役

パリをはじめとする海外の店舗や、国内のSM/GMSでのあらゆる店舗・売場の店舗デザイン・店頭戦略を学び、独立。現在は、小売業からの依頼に加え、メーカーからの販促提案・ショールーム展開の相談など様々な業種・業態の店頭戦略(SP・VMD・設計・店頭ブランディング)を、年間100件以上行っている。近年では、ショッピングモールやチェーンストアからの依頼も多くなっている。また、「商業界」の教育講座、デザイン専門学校、企業研修でも指導にあたり、人材育成にも注力している。