伝説のメルマガ スーパーマーケットのVMD
今日も小売の最前線でお仕事をされている方を迎えて、お客様に商品を購
入していただくことの楽しさや、難しさについて熱く語っていこうと思っ
ておりますので、閉店まで是非お付き合いくださいね。
GUEST No.23
『スーパーマーケットのVMD』
バタンッ(ドアの開く音)
「いらっしゃいませ」(私、以下Fで)
「どうもこんばんは。」(以下FJ)
「いらっしゃいませ」
<ゲストの紹介>
FJさんは食品スーパーチェーンの再起を託されたプロジェクトチームの中
心人物です。先日、このスーパーでの売場改善中に他の幹部達が、私が売
場を改善しながら忙しく動き回っているのを見ている際に、このFJさんが
「何で皆さんも協力して参加しないのですか?」と声を掛けるとこの幹部
達が口を揃えて、「今日は、見学だから」と……
その瞬間、
FJ氏「そんなこと言ってるから、今の状況なんでしょ!!!自分達から率先
して参加して変わっていかないと意味がない!!!」
この一言を聞いた瞬間に、このメールマガジンへの参加をラブコールした
という経緯です。
F:こんばんは
FJ:今晩は、お招き頂きありがとうございます。
F:コチラこそよろしくお願い致します。お飲み物は何になさいますか?
FJ:じゃービールを頂きます。
F:私もお付き合いさせてください。いやぁ~しかし、突然のお願いで申
し訳ありません。
FJ:いやいや、こんな機会もないですからいいですよ。
F:ですが、あの一言、本当に助かったというか…本来僕が言うべきこと
なんですが、もう開店直前で、しかも生鮮品の入荷待ちというような
状況でしたのでてんぱってました…
FJ:そうですか、僕らもあの日は深澤さんに良い売場を作ってもらって、
それを役員にプレゼンする予定でしたので、勿論そこに集中していた
のですが、あまりにも傍観者で他人事のようになっている自社の人間
を見て、「違うだろう!!!」という…お恥ずかしい…
F:恥ずかしいなんてとんでもない、1人でもFJさんのような方がいらっ
しゃる事で僕らも救われますし、一緒に戦って行くという想いや姿勢
がチームの中にないと必ず、悪人を作りだしますからね。
FJ:悪人とは何ですか?
F:チームの失敗や責任を押し付けることが出来る逃げ道となる対象者や
対象事です。僕らは、その悪人事や悪人にされやすい立場にいますか
ら…かといって責任を背負いたくないということではなく、勝つため
にチームの持っているポテンシャルを使い切りたいと言うことですね。
FJ:それはそうですよね。分かります。
F:特にスーパーマーケットって多分、小売業界の中では非常に体質が古
いですよね。僕自身アパレルの会社を辞めて真っ先に修行したのが食
品スーパーでしたので、この辺りのギャップは非常に、辛いものがあり
ました。
FJ:そうでしたか、確かにこの業界の体質は古くからある慣習や、考え方
が、まだまだ強く残っているかもしれませんね。ただ僕ら若手の世代
がそこを変えていかなくはなりませんから、VMDなどの新しい概念を
取り入れたいんです。
F:そうですね。僕にも協力させてください。
FJ:ありがとうございます。
F:では最後に今後VMDの手法を取り入れて何処を目指して行きますか?
FJ:うーーーん、難しい質問ですが、僕らが提供できる価値というのは基
本的に品質・鮮度・そして安さ。吉野家と一緒ですよ、「安い・美味
い・早い」ですよね。でも知らぬうちに生活観というライフスタイル
の価値について考えることを諦めていたんでしょうね。もしくは、こ
の部分をメーカーに任せていた所が大きかったかもしれません。
VMDを導入したいという思いは、この生活観を通じた価値の提供であり
デパ地下のような、ハイクラスの環境や場面で無い、身近な幸せを感
じる店舗にしたい。食卓から幸せを感じさせる店舗、こんなことが出
来ないだろうか?そう思っています。
F:そうですね。僕もその意見に共感します。食品スーパーが提供すべき
ところで抜け落ちておる箇所は、まさにそこだと思います。
どうしても、日本小売体質は「早く売る・多く売る」ということが前
提にあります。
しかし、「早く売る・多く売る」、そして「正しく売る」という事が
今後、本当に問われる時代になってくると思います。この「正しく」
が、現状では「虚偽・偽らない」という程度の意味合いに過ぎません
が、この「正しく売る」という言葉を、どのように解釈していくか。
ここが、今後の各社の強みの出しどころになるでしょうね。
FJ:まさにその通りだと思います。今後、この正しく売るについて一緒に
お手伝いしてください。
F:勿論です。今日はありがとうございました。
FJ:ありがとうございました。
今日は久々にPAL’S Barを開店させていただいたのですが、残暑厳しい中
熱いトークが出来ました。インタビュー中にも出てきたのですが、「早く
売る・多く売る」を突き詰めていった結果が、今の日本マーケットの現状
であると思います。
そこに、正しく売るという概念があったのか?と問うと、購入者のリテラ
シーの問題もあり、まだまだ成熟していない部分だと感じています。
変化が非常に求められる業界であるからこそ、正しく売るということを売
場作りから模索していくことは、日本のマーケットで売場作りを生業にし
ていく僕にとって一生のテーマになるのかもしれないなぁ~と、その答の
重さに若干腰が引けながらも真っ直ぐに進んで行こうと誓う私でした…。
ではでは。
深澤 智浩
株式会社深澤企画 代表取締役
パリをはじめとする海外の店舗や、国内のSM/GMSでのあらゆる店舗・売場の店舗デザイン・店頭戦略を学び、独立。現在は、小売業からの依頼に加え、メーカーからの販促提案・ショールーム展開の相談など様々な業種・業態の店頭戦略(SP・VMD・設計・店頭ブランディング)を、年間100件以上行っている。近年では、ショッピングモールやチェーンストアからの依頼も多くなっている。また、「商業界」の教育講座、デザイン専門学校、企業研修でも指導にあたり、人材育成にも注力している。