伝説のVMDメルマガ VMD 戦略を語る
みなさんご無沙汰しております、深澤です。
「愛あるブランディングを語る店」PAL’S Bar今月も開店です。
お店には表立って活躍するカッコイイ業界人は集まらないのですが、
日々、夜を徹してお客様の為に活躍される汗と涙の似合う小売関係を私のお店に招いて、
一杯やりながらお仕事についてブ熱ーーーいお話を伺い、
ちょっとだけ皆さんにその内容をお届けするという趣向のメールマガジンです。
もし50回続いたら、リアルに何所かに PAL’S Barを作る野望もありますので
是非、職場内、お友達、親類縁者にご紹介頂き、
ブログ全盛期の世の中でひっそりと続けていけるようにしたいと思いますので、宜しくお願い致します。
では、時間ですので、そろそろ開店します。
しかし、、、すいません。
お客様がご来店されない・・・・・・・・・・・・
そうなんです。予定しておりましたお客様がご来店されないんです。
今月は開店休業ですね・・・・・・・・・・・・・・と、いうわけにはいきませんので、
このPAL’S Barを開店する元になった、あるブランドのGMとのVMD談義の模様をお伝えしますね。
某人気カジュアルブランド国内GMと会食する機会がありました。
1年ほど前からこのブランドのVMDのコンサルを定期的にしております。
席に着くなり
(GM):『深澤君 VMDって何所に向かってるの?』
(私) :『エッ??何所って、言われますと?今後の展開ですか?』
(GM):『うちのコトじゃないよ』
この後2時間くらい、最近の国内アパレルの売場話しに突入!!
VMDについての議論が始まりました。
実はこの日、GMは新しいPOSシステムの導入に際して数社のシステムや
コンサルの営業担当と面談。その話の席で、とにかく気に入らないことが起
こったらしいのです。気に入らないこととは POSシステム導入と同時に
VMDコンサルのパックとなったシステムの営業を受けたらしいのですが、
営業担当者が、売場の改装を前提に陳列のノウハウを学び什器を改善すれば
POSシステムも更に機能的に使えて『簡単に売上は上がる』と言い切った
ことに腹が立ったらしいのです。
その瞬間は自分を押さえていたようですが、ブランドイメージや商品の話を
こちらから切り出すと、『それは担当が違うので分からない・・・・・』と
いう答えが返ってきたそうです。
これがお怒りの原因で、『簡単に売場で売上が上がると言い切れる人間がブ
ランドイメージや商品については分からないとは何事だ!!』ということで
した。
そこでGMは直に、都内にいた私に電話を下さった。
GMとの話の結論を先に書いてしまうと、『正直まだ90年代の売場作りを
VMDの完成形だと思ってる人たちが多い!!しかもそれを平気で売ってる!!
これって大丈夫なの?』と、私にVMD以外のもっと別の言葉を考えて今の
仕事を進めてみてはどうかとアドバイスをしてくれました。
90年代のVMDは『選べないお客様の売場作り』だった気がします。『選
べない』とはスタイリングが出来ないとか、商品の良さが分からないという
意味ではありません。『選べない』とは、何となく流行感があって、値ごろ
感もあり、しかも色サイズが豊富でそれなりのブランドイメージがある売り
場で売っている商品なら何所で買ってもいいというお客様のことです。
90年代後半からPOSシステムとQRを使い、ブランドターゲットの間口
を大幅に広げた売場がVMDの理論を用いて、とにかく隣の店よりも見やす
く買い易くを掲げてブランドイメージを安売りしてきました。
今現在そういった売場が新規オープンしたSCやテナントビルにどのくらい
残っているでしょうか?また現在『選べないお客様の売場作り』を続けてい
る売場の中で輝いている売場はあるでしょうか?
正直言うと殆ど隣の売場との違いが見えない店ばかりです。私自身、この話
を書いたからと言って何のメリットがある訳でもありません。ただ、10年
前と何ら変わらない売場作りの話、
・MDの視覚的提案
・人件費削減
・売場のシステム化
・関連販売による売上効果
など机の上だけで話されるVMDの効果や完成形をただ単に突き進めていく
ことで、アパレルもコンビニエンスストアと何も変わらない売場を作ってい
るということに誰も疑問を持たなくなることが怖くなるのです。
90年代のVMDから出来上がる売場は、お客様にとっては『選べない売場』
(どこで買っても違いを感じない)で、選べない売場から結局『選べないお
客様』を生み出すこととなりました。
『誰に売っているのか、誰から買っているのか分からない』、販売側もお客
様もどちらの顔も見えない戦略と売場でブランドロイヤリティーを育てよう
としても育つ訳がありません。その結果、このような売場から物凄い勢いで
お客様は離れていきましたし、ユニクロの登場によって中途半端な店は消え
ることとなりました。
このままではVMDという言葉自体が煤けてしまうのでは?それならもっと
別の言葉で、売場マネジメントを行ったらどうかというGMの心使いは本当
にありがたいことです。でも私はVMD自体は変わり続ける仕組みであって
も、それを支える理論は不変的なものであると信じていますので、出来れば
この言葉の中で生かされていたいと思い、今回この話を掲載しました。
勿論色んな意見はあるでしょうが、お店、ブランドが発信するイメージや情
報と、お客様の求めるイメージを出来る限り高い所でつなぎ合せていくこと、
その為に商品や売場の良さを理解しその時代に合ったお客様のニーズに答え
ていく仕組みとしてVMDが存在していると強く信じています。勿論、この
GMのブランドでもこれを実践させていただいておりますし、今も必要とし
ていただいております。
皆さんは何をVMDに求めていますか?
この時のブランドGMとの会話が現在の僕の仕事のすすめ方に大きな影響を
与えたのは言うまでも無く、そして『僕のVMDのあり方』を確信付けた瞬
間でもあります。
PAL’S Barはこんな僕の考え方や方向観に賛同して下さったり、またお手伝い
をして下さったり、新たな気づきを与えて下さった方への、ほんの少しの恩
返しの為に開店させました。まぁ結局はここでもお世話になってしまってい
るわけですが・・・・・・
今後もそんな僕自身が、本気でお付き合いをさせていただいている『素晴し
い方々』をご紹介させていただきますので、宜しくお願い致します。
では、また来月。
深澤 智浩
株式会社深澤企画 代表取締役
パリをはじめとする海外の店舗や、国内のSM/GMSでのあらゆる店舗・売場の店舗デザイン・店頭戦略を学び、独立。現在は、小売業からの依頼に加え、メーカーからの販促提案・ショールーム展開の相談など様々な業種・業態の店頭戦略(SP・VMD・設計・店頭ブランディング)を、年間100件以上行っている。近年では、ショッピングモールやチェーンストアからの依頼も多くなっている。また、「商業界」の教育講座、デザイン専門学校、企業研修でも指導にあたり、人材育成にも注力している。